<序論>
戦後の知的障害教育は、初めは各教科の枠内で学年段階を下げる反復指導が行われていたこともあったが、米国の経験主義教育の影響を受け、昭和20年代から実生活重視の「生活主義」教育へと方向転換した。これが総合学習、自立活動の原点であるが、「養護・訓練」が受動的なニュアンスを含むのに対し、生きる力をはぐくむ「自立活動」では、子ども自身が主体的に行動し、一人一人の障害や発達に応じたカリキュラムで行われる。
特別支援教育は、あるべき教師像も教育目標も一般と同じである。しかし、早期支援と障害者の自立支援の観点から、教育、福祉、医療、労働等の分野の専門家が一体となり、乳幼児期から学校卒業まで一貫した「個別の教育支援計画」を策定することが進められている。
<具体的な共通点と相違点>
一般校と特別支援校との比較を行う。一般校にも障害を持つ児童生徒が通級、特殊学級におり、今日では障害の程度だけではどちらの学校を選択すべきかといった区分はない。特別支援学校は通常の40人学級より少ない。8人以下の教室で、一人一人工夫された教材教具を使用するなど、きめ細やかな指導が期待されるが、教育課程はほとんど同じで、ボランティアや社会奉仕のかわりに自立活動や社会参加が加わっている。授業時数は共に年間35週で、小学校(部)45分、中学校(部)50分授業も等しい。視覚障害児・聴覚障害児で、知的障害を伴わない場合は、教科の目標、内容は一般に順ずるとされている。
ただし、学習形態に関しては、一般校と異なる点が多い。重複障害者に関しては、各教科や総合学習を自立活動主体に振り替えることができ、知的障害者に関しては、教科・道徳・総合学習、自立活動の枠をとりはらって、合わせて教える「合科」が認められている。一般校が学年別に目標や内容が詳しく細かく定められ、教科書があるのに対し、特別支援学校では目標や内容を障害や発達段階に合わせるなど、ケースバイケースである。視覚障害児や聴覚障害児では、視覚を補う器具や少ない聴力を利用する機器の取り扱いを学ぶ必要があり、知的障害児では、作業学習(木工、紙工、陶芸、食品など)があり、習得のスピードも一般校よりゆっくりである。特別支援学校の教員は、一般校の免許を持ち、「教職に対する強い情熱」「高い専門性」「統合的な人間力」を持つ理想の教師像に加え、教育の原点であるきめ細かい観察と配慮ができ、独自性、共通性を使い分ける必要がある。
<考察>
障害児に向き合うためには、手探りで根気よく行うのではなく、効率的、効果的に指導する専門性が必要である。例えば、心身のケアの仕方、病気に対する医学的知識、自立活動の進め方などである。障害児は老化で機能が衰えていくお年寄りとは異なる。障害のために、発達すべき社会性や知識の吸収が妨げられているに過ぎない。若い彼らのために、「集団行動」「セルフコントロール」「他者の視点に立つこと」「コミュニケーション能力」「生活力」のスキルが高められるよう、教育の原点に返って指導しなくてはならない。
どちらかといえば、帰国子女を日本社会になじませるように、長所を伸ばし、短所を補い、子どもの立場に立った学習指導案を作る必要がある。一般校よりも一層、しっかり練られた指導案を作り、子どもの意欲を引き出せるよう、その子に応じた最適のレベルの課題を設定し、達成する喜びを味合わせていくような授業が望まれる。
(2009年仏教大学教育学部講義レポートより転載)
(2009年仏教大学教育学部講義レポートより転載)
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