2011年8月15日月曜日

病弱・虚弱児の主な疾患における生理・病理2009

病弱・虚弱児の主な疾患における生理・病理2009
<悪性腫瘍>
悪性腫瘍は小児期では小児がんと呼ぶ。小児がんの種類は、急性白血病、悪性リンパ腫、脳腫瘍、神経芽腫、ウィルムス腫瘍、横紋筋肉腫、骨腫瘍がある。
そのなかでも白血病は、白血病細胞が骨髄の中で増殖し、血液細胞の生成を阻害することにより生じる病気で、急性の場合、発熱、顔色不良、出血傾向があり、検査をすると、白血球、赤血球、血小板の3系統のうち、1つ以上の低下が見られる。治療は、抗がん剤を使う化学療法である。慢性骨髄性白血病は、骨髄移植により治療される。
悪性腫瘍の子どもには、精神ケア、後遺症、家族へのケアなど、医療、教育様々な分野の協力の元、トータルケアが望まれる。ターミナルケアは、進行が早いため、工夫が必要である。
<循環器疾患>
循環器疾患は、心臓の構造に生まれつき異常のある「先天性心疾患」と、病気による心臓後遺症である「後天性心疾患」とがある。
先天性心疾のうち、病弱・虚弱児教育の対象となるのは、現在の医療水準では手術しても修復しきれない疾患と、手術のできない疾患があげられる。例えば、心内膜床欠損では、心房の隔離が不十分のために逆流が生じる。この他、体循環が体循環で、肺循環が肺循環で完結してしまう、完全大血管転位症などがある。
学校では、運動レベルがAからEまでの5段階にて、運動レベルが定められており、体育の授業の参考にされている。
<腎疾患>
急性腎炎は多くが溶連菌感染後、急性糸球体腎炎である。まれに、細菌や水痘ウィルスムによる場合もある。治療は安静と食事療法が基本である。
慢性腎炎の定義は、WHOでは「蛋白質、血尿、高血圧を呈し、しばしば無症状のまま数年から数十年にわたって遷延し、徐々に腎機能障害が進行する病態」である。治療は、むくみや血圧、腎機能、尿蛋白の程度に応じて異なっており、適切な時期に透析を導入すべきである。腎不全の場合は、移植が望ましい。症状により管理区分が5段階あり、在宅、教室、軽、中程度運動、普通運動と徐々に制限が少なくなっていき、回復期には制限はない。
その他の腎疾患として、低蛋白血症とむくみを呈するネフローゼ症候群、先天性腎尿路異常、塩分制限や低蛋白食療法が必要な慢性腎不全などがある。
<気管支喘息>
気管支の狭窄が、下気道の場合、呼気性喘鳴、上気道では吸気性喘鳴がきかれる。アレルギー喘息の場合は、原因抗原や誘発因子を除去する。気管支拡張薬により、気道を確保する。大発作では、喘息死の危険もあるため、発作の程度を判断し、様子を見るか救急車で病院に運ぶか決める。
<糖尿病・内分泌疾患>
糖尿病はインスリンの作用不足、または分泌低下が原因で、高血糖となる疾患。1型から4型まであり、インスリンを分泌している膵臓のランゲルハンス島β細胞が破壊される1型、インスリン抵抗性と分泌不全が原因の2型、その他(3型)、妊娠糖尿病(4型)に分析。小児糖尿病は2型が1型の3倍と多い。1型は生涯続く病気であるが、2型は生活改善でよくなる。治療法には、インスリンの皮下注や、食事療法、運動療法などがある。学校では注射や捕食の必要な生徒への理解や協力が必要であり、他の生徒が理解するよう働きかけることが望ましい。
内分泌疾患には、下垂体のGH(成長ホルモン)分泌不全低身長、甲状腺の機能亢進症と機能低下症(クレチン症、橋本病)、副甲状腺の機能亢進症と機能低下症、副腎の「先天性副腎皮質過形成症」「クッシング症候群」、性腺の「思春期早発症」「思春期遅発症」などがある。低身長の子どもは、劣等感を抱き、自尊心が傷つきやすく、やる気が損なわれやすいため、注意が必要である。
膠原病とは、自己免疫反応による炎症が生じる病気である。若年性突発性関節炎(リウマチ)は、発疹や発熱を繰り返す。全身性エリテマトーデスでは、症状が多彩で広範囲であり、光線過敏をひきおこす。その他に、皮膚筋炎、多発性筋炎、全身性硬化症、高安症、ベーチェット病などがある。
<てんかん・神経疾患>
精神疾患は心の病気であるが、神経疾患は純粋に神経経路の疾患により、手足が麻痺したり痛みを感じなくなる病気である。
てんかんとは、慢性の脳の疾患で、大脳ニューロンが発作性の過剰放電を繰り返し、それに伴って、異常な反応(てんかん発作)を繰り返すものであり、WHO(世界保健機構)は、「脳腫瘍などの、脳占拠病変や系統的代謝障害による疾患は除外する」としている。
原因には、遺伝による「特発性」、胎生期および周産期の脳疾患(脳炎や脳症、脳奇形、脳血管障害、髄膜炎)、脳外傷などによる「症候性」、原因不明の「潜在性」とがある。
抗てんかん薬は、てんかん発作の閾値を下げ、発作を起こりにくくする(抑制率50~80%)が、最低でも2年間は飲む必要がある。外科治療では、大脳皮質の特定部位の切除、または表皮の5mmごとの切り込みを行う。
生徒がてんかんの発作を教室で起こした場合は、発作中に頭部を保護する他、発作を正確に観察するなど、冷静な対応が求められている。
てんかんの子どもには、基本的には他の子に対するのと同じように扱い、水泳中など特別な場合を除き、命に危険が直ちに及ぶことはないので、落ち着いて対処する。ただし、5分以内に痙攣がとまらなければ、救急車を呼ぶ。周囲の子どもには、「痙攣の発作で、まもなく元に戻って元気になるから心配しなくていいよ」と伝える。急な発作により、周囲の子どもが偏見を持ったり、あるいは怖がらないような配慮が求められると思う。
発作には痙攣性のものと、非痙攣性(欠神発作、脱力発作)のもの、全身発作から部分の発作のものなど、様々な症状が見られる。
そのほか、多発性硬化症、重症筋無力症なども、神経疾患である。
<まとめ>
教育現場では、医療機関との連携の下、ひとりひとりの子どもについて、どこまで運動が許可され、どこまで活動範囲を広げてよいか、あるいは、どんな治療や配慮が必要か、把握して指導計画を立てていくべきである。


(2009年仏教大学教育学部講義レポートより転載)

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