2011年8月15日月曜日

学習障害の定義、分類、原因、関わり方について2009

学習障害の定義、分類、原因、関わり方について2009
<序論>
学習障害児の研究は、以前よりイギリスにて「ディスレクシア」という概念でとらえられてきてはいるが、まだ原因が不明な点も多く、二次的な障害との区別もつきにくい。日本では、障害別に対応しているが、イギリスでは子どものニーズ別に行っている。他の障害と同じく、早期発見と早期対応が望まれている。
<定義と分類>
学習障害(LD)の概念は、1960年代の初頭にアメリカで発祥した。文部科学省により「基本的には全般的な知的発達に遅れはないが、聞く、話す、読む、書く、計算する又は推論する能力のうち、特定のものの習得と使用に著しい困難を示す」と定義されている。
WISC知能検査をもとにした分類によると、言語性能力が低い言語性LD、視知覚や空間認知の障害である非言語性LD、注意や記憶の能力障害のために理解や処理能力に障害のある注意・記憶性LDの3つがある。
また、医学的には、1994年発表のDSM-Ⅳをもとに、狭義の「読み書きそろばん(3R‘s)」の学習障害の他、運動能力やコミュニケーションの障害、さらに広義で自閉性障害などの広汎性発達障害を加える場合もある。このDSM-Ⅳをもとに分類すると、①読字障害②算数障害③書字表出障害④発達性協調運動障害⑤表出性言語障害⑥受容―表出性言語障害⑦音韻障害である。このうち狭義のLDは、①②③と特定不能の障害である。
<原因>
原因は、胎児期や出生後に浴びた化学物質や放射線などによる、中枢神経系の発達障害であるといわれている。情報処理機能不全により、処理能力に偏りがみられ、学習において基礎的能力の習得困難が引き起こされている。具体的には、聴覚認知、視覚認知に障害がみられたり、言語機能、つまり正しく聞き、発言し、言葉の概念をとらえ、文法や文章を認知することに障害がみられる。このため、冗談や比喩を苦手とする。また、短期記憶や作業記憶といった記憶系に問題を持つケースもある。
<LD児へのかかわり方>
情報処理機能不全というのは、情報を1つずつ連続的に処理していったり(継次処理)、あるいは1度に与えられた情報を空間的、全体的に統合していったり(同時処理)することに困難を示すということである。よって、指導内容や教材、学習法に個別の工夫が必要である。
ポイントは「動機付けを高める」「本人の水準にあった課題を見つける」「細分化して、スモールステップで行う」「あせらないで学習できるように速度はゆっくり行う」「処理がスムーズにできるよう、繰り返し学習する」「学習の過程や成果は、即時にフィードバックする」そして、認知特性に応じ、強い能力をいかして弱点を補い、長所を伸ばしてやる学習方法が望まれる。
具体的な指示で簡潔に説明し、社会生活に必要な課題(3R‘s)に焦点を当て、行動のコントロールを学んでコミュニケーション能力を高めていく指導が望ましい。二次障害の原因を作るので、子どもの心を傷つけない指導が必要であると思う。また養育者援助も必要である。
<まとめ>
LD児にとってわかりやすい授業というのは、誰にでもわかりやすいということである。原因で区別するよりも子どものニーズに応じて対応していくことは、現在の教育が抱える学力低下、不登校などの諸問題の解決につながると思う。LD児も向上心を持ちながらうまく学習できないことで悩んでいると言われている。早期からのLDの発見とその対応のマニュアルが望まれる。


(2009年仏教大学教育学部講義レポートより転載)

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