2011年8月15日月曜日

重複障害児に対する自立活動2009

重複障害児に対する自立活動2009

<序論>
重度・重複障害児は、医療・福祉の現場では「重症心身障害児」と呼ばれ、重度の知的障害と重度の肢体不自由が重複している児童のことであり、IQが25以下で極めて運動の制約がある児童、あるいは有用な運動ができても行動異常、視覚や聴覚の障害を有する児童。またはIQが25以上50以下且つ何ら有用な運動ができない児童のことである。平成7年には、この「重症心身障害児」よりも重度で、濃厚な医療介護を継続的に必要とする「超重症児」の区分も定義されている。どちらも、家庭内での療育が困難であり、医師や看護婦による医療・療育活動が行われている。
多くは身体発育が不良で、生命維持がかろうじてできるか困難な状態であり、意志や欲求を表しにくく、周りの人とのコミュニケーションが取りにくい児童である
<重複障害児の自立活動>
自立活動は、他の特殊教育と同じく、5つの領域に分かれており、1.健康の保持、2.心理的な安定、3.環境の把握、4.身体の動き、5.コミュニケーションとなっている。指導する上で重要な点は、管理・保護的な支援は必要最小限に抑え、本人が自主的・主体的に活動するように温かく見守ってあげることである。そして、本人が自分の持てる力を最大限に発揮し、自立を目指すことが重要である。
1.健康の保持では、食事や睡眠、排泄等の日常の生活リズムを確立する。生活リズムを整えることは、2の心理的な安定にもつながる。食事摂取を中心とした栄養指導を行い、夜と昼の睡眠リズムを作り、自力ではできない排泄がスムーズに行えるよう促す。また、身体のいろいろな機能や感覚を鍛え、基礎的な体力をつけることが重要である。
2.心理的な安定をはかるには、教師が予め児童のことを良く知っている必要がある。新しい環境が苦手な児童を慣れさせたり、ストレス溜める前に音楽を聴いたり遊んだりして解消する。粘土で物を作らせるのも良い。児童に何かをさせるときは、精神構造が未分化のため、現実的、具体的、必要感の高い動機付けをしてやる。例えば、実際に農村へ連れて行き、畑や作物を見せ、音や臭いに触れるとよい。
3.環境の把握をしようにも、重症心身障害児の場合、障害に取って代わる手段の活用も難しく、認知や行動の手がかりとなる概念の形成も困難である。コミュニケーションをとる前に、まず、周りに誰がいて、どんな気持ちでいるのかを感じ取るところから始まる。
4.身体の動きでは、体育により、関節の可動域をゆっくり広げたり、行動領域を広げたりしていく。また、日常の諸動作について、多少でも子ども自身が直接関わるように働きかける。
5.のコミュニケーションは、障害の種類によって異なるが、基本は外界の物や人に自発的に働きかけるように促す。言語障害の場合、音声や発音に障害があれば、まず、正しい発音を聞き取り、話す訓練をおこなう。言語発達遅滞の場合、言葉は「教える」のではなく「育てる」気持ちで行う。聴覚に障害がある場合は、補聴器を利用し、発語の訓練を行う。また、単語のみから2語、3語文を作れるように、指導していく。
<まとめ>
一般校の「学校」のイメージを捨て、純粋な教える喜び、個別のニーズにこたえる姿勢が大切である。重複児も、ゆっくりとではあるが成長を続けており、発達を見守り、自立に向けて支援していく必要がある。


(2009年仏教大学教育学部講義レポートより転載)

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